どこかで誰かが…

あの日から佳菜子は、高木のことが妙に気になりはじめ…


練習中、ボールが男子のコートへと転がると、追いかけた先に高木を見つけては、そのシュートフォームに目を奪われていた。


「さっき見てただろ?もしかして俺に意識とかしてる?」

ひょっこり近づいては、囁くように聞いてくる高木に、

「フォームは綺麗なのに、なんでシュート外すかなぁ?と思ってね。」

言い返す佳菜子。


「堀口に見られてるって思ったら、つい力が入っちゃった。」

「はいはい。」

「ホントだって。」


高木も負けてはいないが、佳菜子もそんなに単純ではない。


「じゃあ、次の2対2、絶対決めるから見ててよ!」

「見れるわけ無いでしょ!こっちだって練習してんだから。」


そう言いながらも、順番待ちの間、すっかり高木を目で追っている佳菜子。

と、その時、

「ヘイ!」

わざわざ、ゴールから離れた方へと走り、パスを要求した高木が、

「ウォーーィ。」

見事、3ポイントシュートを決めてみせた。


「ぬはははは。復活!」


その、真っすぐに伸びる、静止画のようなフォームから放たれたシュートが、綺麗な放物線を描き、まるでリングに吸い込まれたかのように、シュッと網をくぐり抜けた瞬間、
佳菜子もスカッとした気持ちになったのだった。