そんな頃、
大沢の元に、ある大学の体育学部への推薦の話が舞い込んできた。


クラブチームに所属しておらず、大会も夏で敗退した大沢にとって、またとないチャンスだ。


試験の前からはしゃぐ大沢を、
佳菜子は心から応援した。


そして、ひと足先に、無事、進学を決めた大沢。


次は佳菜子の番だ。


さすがに、受験勉強に本腰を入れるため、
しばらくの間、大沢とは、
メールでのやり取りだけで過ごすことを決意した。


渋々納得する大沢からは、1日に何度もメールがきた。

しかし、

佳菜子からのメールの返信以外に、大沢発信のメールが、1日1回となっていき…
いつしか、
返信メールしかこない日が増すようになっていった。


自信を取り戻した大沢が、友達との関係も修復をはじめたことを、
大沢本人からのメールを読んで知っていた佳菜子は、
安心と不安の狭間に揺れていた。


しかもこの時期に…


誰もが、自分のことで精一杯の時に、相談などできるはずがなく、

「まずは受験に集中しよう!」

必死に自分に言い聞かせる佳菜子。


自分の未来が開けていなければ、新しい未来へ飛び立とうとしている大沢を、笑顔で見送ることができないと、
すでにこの時、考えはじめていたのだ。