どこかで誰かが…

高木はいつも、佳菜子を見送らなかった。


あの頃の高木は、彼女でもなく、ただ想いを寄せる佳菜子に対し、どんな顔で見送ったら良いのかが分からなかったのだ。


もしかしたら、自分でも気付かぬうちに、窓の向こうの佳菜子の姿を、愛しいそうな目で見送ってしまいそうで…
意識して背中を向けていたのだった。


それを、佳菜子が気にしていたと知り、

「え、あぁ、うん。」

少し、驚いた。

その反面、

“バレてた?”っと恥ずかしくも思いながら、あの頃のことが思い出されてきて…


二人で白線に向かって歩きながら、

「じゃあ、バイバイ。」

佳菜子から先に切り出されると、


「あ、2回言った。」

「え?」

「言った言った!」

「…あは、バイバイは元々2回でしょ!ほら、手ぇ振って!」

「あぁ、じゃぁな。」

「…バイバイ」


懐かしい会話で誤魔化す高木は、独り車両に乗り込む佳菜子を見送るのだった。


佳菜子の視界から、最初で最後の高木が消えていく…。



(ゆっこちゃん、本当にモテ期だったのかな?…分かったことは、私と高木くんは結ばれることのない運命だった…ってことだね。)


オレンジ色の高木は、本当に、
セピア色の思い出になっていくのだった。