どこかで誰かが…

さっさと前を歩く大沢の背中は、殺気立って見え、

佳菜子は、ただ黙って後ろを付いて歩いていた。


駅に着くと、

「ついてくんな!」

振り返りもせずに、言い放つ大沢。


「…私の家もこっちだし…」

「じゃあ、先に行けよ。」

「…」

「独りで考えたいんだよ!」

「…ごめんなさい…私があとで…だから先に行って!」


佳菜子の怯えた声も気に掛けることなく、
大沢は、独りで先に改札を抜けて行くのだった。



学校では、大沢の尻拭いに必死の清瀬がいた。


「村井、すまなかったな。俺が余計なアドバイスしたせいで…」

「いいえ!」


大沢のことより、さっきの清瀬に緊張する村井。


村井だけではなく、そこに居た者すべてが、清瀬の豹変に驚いたに違いない。


しかし、ゆっこだけは、違う観点から清瀬に接していった。


「佳菜子、咄嗟に“かーくん”って言ってたね。」

「…あー、うちの母親の呼び方だよ。アイツの母ちゃんもそう呼んでるから。」

「…知らなかった。」

「言ってねーもん。堀口にも、中学の時、その呼び方止めさせたんだ。」

「じゃあ、佳菜子のことも、違う呼び方してたの?」

「…かなちゃん。」