どこかで誰かが…

一度、唇が離れると、
二人はじっとみつめあい…

また、ゆっくりと重なり合った唇は、
さっきの大沢の言葉のように、
一歩、前に進んだキスへと進化していった。


聖バレンタインという、その夜に

二人の距離が、いつもより縮まったように思えた、その帰り道を、手を繋いで歩いて行く…


家のそばまで来ると、佳菜子が、繋いだ手を離そうとするのが伝わった。


しかし大沢は、その手をギュッと握り、

「あーあ。帰したくないなぁ…」

そう言って足を止める。


「な!何、言ってんの…」

「ウソだよ。そんな真顔になるなよ。」

「だって…」

「帰したくないってのはウソじゃないけど…いつも一緒に居たい。マジでキヨが羨ましいよ!」


そんな大沢の言葉に、佳菜子の心臓は、誰かに掴まれたような痛みに見舞われ、

「俺さ、明日、練習ないんだけどさ…」

「あ、そうなんだ?」

「おまえ…明日、練習休めないの?」

「え?」

「…うち…来ないか?」

「!」

「…来いよ、うち。」


佳菜子は胸を押さえ、ゆっくりとうなずき…
顔を上げられないまま、家の前へと辿り着いていた。


「じゃあ…あとで電話する。」


そして大沢は、優しい笑みを浮かべて帰っていくのだった。