どこかで誰かが…

ある日の放課後、

部室から体育館へと向かう佳菜子を、引き止める声がした。


「堀口!」

それは清瀬で、

「今日、行く?」

「あ、いいよ。」

「じゃあ、待ってて。」


たったそれだけの言葉を交わし、別々の方向へと歩いて行く二人。


「なになに?行くって何処に?」


一緒にいた部員の子が聞くと、


「え、うん。地元の友達ん家。」

「…誰なのソレ?」

「ちょっとね。」


その曖昧さが良くなかったのか、
練習中、秘かに、そのことが話題となっており…
練習終了後、二人が帰っていく姿を一目見ようと、
皆で、佳菜子の後を隠れて見張っていた。


「何してんだ?」

そこに、男子バスケの連中もやってきて…

「シーッ!」

「佳菜子が“男”待ってんの!」

女子は、その足止めのために白状するしかなかった。


すると、サッカーの練習を終えた清瀬が姿を現し…

皆、暗黙の了解で、その様子を、唾を呑み込み見守った。


なんの会話もなく、そのまま歩きだし校門を抜けて行く二人。


「へー、意外な組み合せだな。」


そう呟くように言った高木の言葉を、聞き取った者はいたのだろうか…