どこかで誰かが…

その男、高木は、礼を言いながら佳菜子の手を両手で握った。


「え…別に私は、そんな…」


それを見て、ゆっこが一言。

「ホント調子が良いんだから!」


そして、

「高木の奴、どさくさ紛れに手、握ってるぜ。」

「あーゆートコ、ウマイよなー、アイツ。」


他の男子の声も耳に入り、
佳菜子の顔は、カーッと赤くなっていった。


それに気づき、すぐに手を離した高木が、

「ごめん。」

と、小声で謝った時、

(あれ?)

佳菜子は思った。


「高木、帰んぞ。」

「んぁ。」


男子メンバーの元に戻り、どんどんと先を歩いて行く高木が、
頑張って、あんな“キャラ”を演じているのでは?と…


そんなことを考えながら、前を歩く男子の群れの中の高木を見ていた佳菜子。


ふいに高木が、一度だけ後ろを振り返ったとき、
確かに目が合ったことは、
互いに気がついていた。