ネバーランドへの片道切符

「前よりは、だいぶ良くなった」

「でもまだ英語引きずってる」


この前受けた模試が返ってきたので、彼に見せている。


「得意の数学でカバーしてるからそんな不安がらなくても、模試もB判定だっただろ」


落ち込んでる私を慰めてくれてるだろーケド。
表情の変化が乏しい彼は、一見通常時余り変わらない。


だけど瞳は、「心配ない」と訴えてる。


「B判定でも、気休めにしかならない」


せっかく慰めてもらっているのに、「ありがとう」と素直に言えない。


「A判定とっても同じこと言うだろうね。僕もそうだったから」


彼は私を分かってる。


苦手と得意科目の点数の差が半端じゃない。


こんなに差がつくと、数学でカバー出来なくなったときが、怖い。


だからバランスよく点数をとらないといけない。


――あーいや、毎日、毎日、勉強のことばかり考えると、鬱になりそう。


勉強と言うワードから逃げるように、不意に目に入った彼の腕時計を見つめた。