「あれ、陽生?」
だけどその時、目の前に現われた見慣れた人影。
「…えっ」
「なんだ帰ってたの…って、あれ?でも今日はもっと遅くなるって言ってなかったけ?」
キョトンと言葉を向けながらエレベータに乗りこむその人物。
肩に鞄をかけ、両腕にブラウンを抱えながら近づいてくる愛しい姿に俺は思わず動きを止めた。
……は?
「果歩…お前何で…」
「ん?何って…ちょっとコンビニにお菓子買いに行こうと思ったんだけど…なんか財布忘れちゃったみたいで…」
「えっ、コンビニ?」
「あ、うん。でも結局何も買えず帰ってきちゃったんだけどね」
そう言って恥かしそうに笑った果歩に俺は言葉をなくす。
同時にエレベーターのドアが閉まり、ガタっとゆっくり動き始めた。



