「う~ん、ちょっと遅くなっちゃったかな」
もう、周りはすっかり鮮やかな茜色から、寂しげなダークブルーへと変わってしまった。
今日1日、後藤の付き添いでショッピングを楽しんできた私は、薄暗い空の下、駅からマンションまでの道のりを足早に歩いていた。
そろそろ夏休みも終わりだな…。
ふと、考えながらマンションまでたどり着く。そのまま足を止めることなく私はエレベータに乗り込んだ。
チーン…
エレベーターを降り、玄関の扉の前に立ったところで私は思わずため息を吐く。
鍵を開ける手が少しだけ躊躇してしまう。
それもそのはず。
この、扉の向こうの光景を想像すると、どうしても心よく部屋に入ることができない。
何となく気が重い…。
うな垂れながらまた、深いため息を吐いた私。
けど、こうしてても状況がこれといって変わるものでもないし、どうにかなるもんでもない。
はぁ…大丈夫、気にしない、気にしない。
うん、うん、気にしなければいいんだから。
そう自分に言い聞かせ、鍵を開けた私は、重い足取りで玄関の扉を開けた。



