甘い体温②・前編・


「ちょっ、果歩ストップ!」



突然向けられた大きな声。


驚き、ふと顔を横に向けるとそこには何故か、呆れたように陽生が私を見ていた。



「えっ……」


「いいからちょっと落ち着けって、つーか今はそんなくだらないことでもめてる場合じゃないだろ?」



ため息を吐いた陽生。


そのままグイっと引っ張られて元の場所に引き戻された。



「沙希も沙希だ、あんまり果歩を刺激するようなこと言ってんじゃねーよ。

お前こそそんな呑気に言い合いしてる場合じゃないだろ」



そう言われ、私も沙希も言葉をつぐむ。



確かに、陽生の言う通りだ。


今ここでこんなバカげたやり取りをしてる場合じゃないのかも。


気まずくなった私は陽生から視線を逸らす。


しゅんと俯いた瞬間、冷静さが少しづつ戻ってくる。


はぁ…と息を吐き、再び顔を上げれば陽生が真剣な面持ちで沙希を見つめていた。