「あの、なにか…」
「あっ、いえすみません」
やば…、見つめすぎたかも。
私は握ったままの手を慌てて離し、一歩後ろに身を引いた。
やだ、本当に間抜けすぎる。
そう思いながら、ぎこちない笑みを浮かべ、もう一度お辞儀をして、くるっと背をむけようとしたら……
「あの、すみません」
「……はい?」
呼びとめられて、再び動きを止めた。
「あの、今って先生って中にいました?」
「……へっ?」
「椎名先生って今病院にいらっしゃいました?」
「えっ…」
「いや、えっと、今病院から出て来られたみたいなので」
ふわっと笑みを浮かべられて、私はキョトンと瞬きをする。
「あー…はい。いましたよ。もうすぐ午後からの診療も始まると思うので」



