甘い体温②・前編・


「あの、なにか…」


「あっ、いえすみません」



やば…、見つめすぎたかも。


私は握ったままの手を慌てて離し、一歩後ろに身を引いた。


やだ、本当に間抜けすぎる。


そう思いながら、ぎこちない笑みを浮かべ、もう一度お辞儀をして、くるっと背をむけようとしたら……



「あの、すみません」


「……はい?」



呼びとめられて、再び動きを止めた。



「あの、今って先生って中にいました?」


「……へっ?」


「椎名先生って今病院にいらっしゃいました?」


「えっ…」


「いや、えっと、今病院から出て来られたみたいなので」



ふわっと笑みを浮かべられて、私はキョトンと瞬きをする。



「あー…はい。いましたよ。もうすぐ午後からの診療も始まると思うので」