「それじゃあ、もう行くね」
「ああ、気をつけて」
「うん。陽生も仕事頑張ってね」
それから、時間ぎりぎりまで他愛のない話しをして、院長室を出た私。
病院を出る瞬間、陽生にこっそりとキスされて、そして笑い合って。
うーん。最高にいい気持ち!
なんて、呑気に思いっきり伸びをしていた私だったけれど。
――…バタン。
「果歩ちゃんあれならもう大丈夫そうね。安心した、本当によかったわね」
「ああ。本当だな」
「これでやっと本当の意味で前に進めるんじゃないかしら」
「ふっ。だといいけどな」
陽生と静香さんのしっとりとした会話。
本当に温かい2人の私への思いやり。
だけど…
「それじゃあ…次はあんたの番ね。もう分かってると思うけど、近いうちに一度実家に帰りなさいよ。
もう、何年も帰ってないんだから。
それに、あの人来週にはこっちに(日本)に戻ってくるみたいだから、ちょうどいい機会なんじゃないの?」
「……ああ。そうだな。分かってる。俺もそのつもりだ。
俺も、そろそろけじめをつけなきゃと思ってたところだから」
意味深な2人の会話。
まさか、私が出た後にそんな会話が繰り広げられてるなんて知る由もなくて。



