「ええ…分かってるわそんなこと」
涙交じりの母の声。
だけどそれは、そんな私の気持ちを全て察するような、深い深い声だった。
「そう簡単に許しちゃだめよ」
そう言って、私を見つめる母の顔が以外にもスッキリとしたものだったから、少しだけ…
ほんの少しだけ気持ちがスッとしたようなきがしたんだ。
この人も、この人なりにずっと悩み、苦しんだうえの言葉だと思ったから。
「そっ、じゃあ遠慮なく」
少しぶっきら棒に言った私の瞳からは、もう涙はさっぱりと消えてなくなっていた。
「先生」
ゆっくりと立ち上がった母が、私から隣の陽生に視線を移す。
「この子を…私の娘をよろしくお願いします」
そう言って、最後に微笑んだ顔が今まで一番綺麗で幸せそうだったから、
「はい。責任もって娘さんをお預かりします」
きっと、これから何もかもが上手くいく。
本気でそう思えたんだ。