甘い体温②・前編・


ガチャリ…


一番手前のドアを閉めるなり、私はその場にしゃがみこんだ。


本当、何やってるんだろう。


こんなはずじゃなかったのに。


しかも、こんなふうに逃げてきちゃったりして。


罪悪感が押し寄せる中、私は自分の膝に顔を埋めた。


優、すごく悲しそうな顔してた。


せっかく、あの人とちゃんと向き合おうって決めたのに。


その、矢先が…これ?


もう、マジでダメダメじゃん。


もっと冷静にならなきゃ。


もっとしっかりしなくっちゃいけないのに…


たまらずグッと唇をかみしめた時、カバンの中で携帯が震え、そっとそれを取り出した。




「落ち着いたら、ゆっくり出ておいで」




陽生……


それは陽生からのメールだった。


溢れそうになる涙をぐっと堪えると、今度は胸が切なり、やっぱり涙が零れ落ちる。