甘い体温②・前編・


「……ひょっとして、先生の彼女さんですか?」



あからさまに表情が曇ったのが分かる。


いかにもショックっていった感じだろうか。


相変わらず当の本人は興味なさそうな素振りだけど。



「ああ。てか悪いんだけど、今ちょっと急いでるんだ。用がないならまたにしてくれないかな」



面倒臭そうに答える陽生にナース達が少したじろぐ。


確かに、このままだと余計な時間ばかり過ぎてしまいそうだ。



「あ、すみません。じゃあ私達はこれで…。た、たまにはこっちの病院にも顔出してくださいね」



名残惜しそうにエレベータに乗りこんだナース達。


陽生は相変わらず顔色一つ変えないまま、私の手を引いて歩き出した。




「……知り合い?」



私はチラッと陽生の横顔を見た。



「ああ。研修医の頃、ここで一緒に働いてた子達」


「えっ、ここで働いてたの?」