甘い体温②・前編・


「えっと、確か3階の東病棟って言ってたよな」



そう呟きながら陽生がエレベーターのボタンを押す。


上がっていくエレベーターの中、陽生は一度も私の手を離すことなく、ずっと握っていてくれた。





「あれ、椎名先生?」



エレベータを降りるなり、突然後ろから声がかかる。


振り向くと、そこには白のナース服を身にまとった女性が2人、驚いたようにこっちを見ていた。



「あっ、やっぱり椎名先生だ。すごい、久しぶりですね」


「本当だ。まさかこんな所で会えるなんて」



そう言って、興奮気味に目を輝かせるナース達。


一瞬キョトンとしながら陽生に視線を向けると、「ああ」って感じで陽生もまた目の前の2人に視線を向けていた。



「珍しいですね、今日はうちの病院には仕事で?」


「いや、今日はちょっとプライベートでね」



当たり障りなく受け答えする陽生。


ナース達は繋がれた私との手に気づくなり、あって感じの顔をした。