「えっと、確か3階の東病棟って言ってたよな」
そう呟きながら陽生がエレベーターのボタンを押す。
上がっていくエレベーターの中、陽生は一度も私の手を離すことなく、ずっと握っていてくれた。
「あれ、椎名先生?」
エレベータを降りるなり、突然後ろから声がかかる。
振り向くと、そこには白のナース服を身にまとった女性が2人、驚いたようにこっちを見ていた。
「あっ、やっぱり椎名先生だ。すごい、久しぶりですね」
「本当だ。まさかこんな所で会えるなんて」
そう言って、興奮気味に目を輝かせるナース達。
一瞬キョトンとしながら陽生に視線を向けると、「ああ」って感じで陽生もまた目の前の2人に視線を向けていた。
「珍しいですね、今日はうちの病院には仕事で?」
「いや、今日はちょっとプライベートでね」
当たり障りなく受け答えする陽生。
ナース達は繋がれた私との手に気づくなり、あって感じの顔をした。



