甘い体温②・前編・


――…これで終わりにする?



「もう、過去から自分を解放してやれ」



その言葉を聞いた瞬間、また、涙がポタポタと瞳から溢れ出していた。


胸が苦しくて。


どうしようもなく切なくて。


思わず顔を両手で覆うと、すかさずグイっと陽生に抱きしめられた。



「俺はお前の決めたことなら何も言わない。全力で応援する。いつだってお前の見方だ。

だから、この先お前の暮したい所に行けばいい」


「はるっ……」


「なに、べつに別れるわけじゃないんだ。そんなに泣くことでもないだろう」



クシャクシャと髪を撫でられて、私はもう何も言葉にならなかった。


出てくるのは。


言葉にならない声と、陽生への切なすぎる思いだけ。



「果歩、もう、前に進もう。未来は変えられるんだ。いくらでもやり直せるんだよ」



陽生の手が、優しく私を導いてくれる。


自分の素直な気持ちへと…