甘い体温②・前編・


「果歩。そろそろ前に進まないか?」



それから少しして。ゆっくりと車に戻った私達。


手を引かれ、車に乗り込むなり陽生が私を見てそう言った。



「…えっ?」


「お前のためにも、そして母親のためにも、一度腹割って話し合ったほうがいい」


「腹…割って?」


「ああ。果歩がさっき俺に言ったことを全部ぶつけてこいよ。怒りも悲しみも、今まで言えなかったこと全て」


「えっ…」



全て…ぶつける?


今までの思いを?



「…でも……」


「大丈夫。お前には俺がついてるんだ。心配することなんて何もない」



カーナビのわずかな光の中、陽生の真剣な瞳と目が合った。




「果歩、お前を愛してる」


「えっ…」


「俺はどこにも行かない。ずっとお前の側にいる。だから、安心して自分のこれからを決めろ」


「はる…」



「もう、過去に苦しむのはこれで終わりにしよう」