甘い体温②・前編・


何も言えなかった。


ただ、胸が苦しくて。


初めて聞くその真実にただただ気持ちが押しつぶされそうだった。



「だから、果歩には同じような後悔はしてほしくない」


「えっ?」



……後悔?



「手遅れになってからじゃ遅いんだよ。果歩にはいつも正直で、悔いのないように歩いて行ってほしいから」


「……悔いの、ないように?」


「ああ。間違っても俺みたいな思いだけはして欲しくない。それに……」



ゆっくり肩から顔を離した陽生が、私の体をグイっと反転させた。



「本当は好きなんだろ?」


「えっ…」


「本当はずっとずっと会いたかったんだろ?」



母親に…



そう言われ、私は大きく目を見開いた。


ガツンと思いっきり頭を鈍器で殴られた感覚。


心の…


今までずっと封印してた、開かずの扉を一気に解き放たれた気分だった。