何も言えなかった。
ただ、胸が苦しくて。
初めて聞くその真実にただただ気持ちが押しつぶされそうだった。
「だから、果歩には同じような後悔はしてほしくない」
「えっ?」
……後悔?
「手遅れになってからじゃ遅いんだよ。果歩にはいつも正直で、悔いのないように歩いて行ってほしいから」
「……悔いの、ないように?」
「ああ。間違っても俺みたいな思いだけはして欲しくない。それに……」
ゆっくり肩から顔を離した陽生が、私の体をグイっと反転させた。
「本当は好きなんだろ?」
「えっ…」
「本当はずっとずっと会いたかったんだろ?」
母親に…
そう言われ、私は大きく目を見開いた。
ガツンと思いっきり頭を鈍器で殴られた感覚。
心の…
今までずっと封印してた、開かずの扉を一気に解き放たれた気分だった。



