「うつ、だったんだ…」
「……うつ?」
「ああ。お前も一度は聞いたことあるんじゃないか?最近じゃあそんな珍しい病気でもないし」
そう言われ、私はゆっくりと頷いた。
確かにそれはよく知っていた。
最近テレビとかでも頻繁に取り上げられたりもしてるし。
それに、施設にいた頃、実際うつで苦しんでいた仲間を見ていたことがあったから。
「でも、何でそんな…」
正直ショックだった。
何で、よりにもよって陽生のお母さんが?
「たぶん、寂しかったんだと思う」
そんな気持ちを察するように陽生がまた静かにそう言った。
「えっ、寂し?」
「ああ。俺も詳しくは分からないけれど、親父とお袋が結婚した時、相当周りから反対されてたそうなんだ。
それでもその反対を押し切って2人は結婚して。
そのせいか、周りの親戚なんかに長い間散々嫌味なんかも言われてたみたいでな。
かなり肩身の狭い思いをしてたみたいなんだ」
「そんな…」
「おまけに、元々人づき合いが苦手だったお袋には、そんな愚痴を親身に聞いてもらえる友人もいなかった。
唯一頼みの親父も仕事仕事で、ほとんど家には寄り付かず、家に帰って来るのは年にほんの数回」



