そういえば、あれ以来その内容について全くと言っていいほど触れてはいなかったけれど…
「あれな、実は自殺だったんだ」
「……えっ?」
「あれはまだ俺が14才の時だったかな。浴室で、手首から大量の血を流したお袋が冷たくなって倒れてたんだ」
「……えっ、嘘っ」
………自殺?
「ああ。俺が見つけた時にはもうすでに息はしてなくてな。急いで病院に運んだんけど結局間に合わなかった。そしてそのまま…」
ドクンと大きく脈が波打つ感覚。
その言葉は一瞬にして私の頭を真っ白にさせるのには十分で。
「しかも、その日に限って誰もお袋の異変に気付かなくてな。普段住み込みで働いていた家政婦でさえ全く気づかなかったんだ」
「……」
「兄貴はすでに家を出て一人暮らしだし。静香もその日はちょうど部活の合宿かなんかで家にはいなくてさ。そして親父も…」
そこまで言った陽生が少し言葉を濁らせる。
「いや、あの人は問題外か…仕事で海外を飛び回ってばかりでほとんど家にいることはなかったから」
あの人…。その言葉の語尾が少し冷たく感じられたのは、きっと私の気のせいだよね?



