甘い体温②・前編・


何かの間違いなんかじゃないの?


だって、あんなに楽しそうにブラウンを見てたのに。


あんなに嬉しそうに優に笑いかけてたじゃない。


あんな、幸せそうな姿を目の当たりにして、そんなことこれっぽっちも想像なんてできるわけないよ。


…そうでしょ?




「ああ、本当だ」



けれど、陽生の言葉がそんな思いを優しく打ち砕いていく。



「末期の胃癌だそうだ」


「え?」


「しかもスキルス性の。気づいて病院に行った時にはもう手遅れだったそうだ。

発見した時にはすでに癌が胃全体に広がっていたみたいでな、もう手術もできない状態だったらしいんだ」



陽生はそう言って、その後もゆっくり、分かりやすく話してくれた。



その癌は、普通の胃癌と違って進行がすごく早いこと。


症状も、例え検査をしたとしても早期発見が難しいこと。


そして、今はできるだけ家族と一緒にいられるように、自宅療養してることとか。


まるで医者そのものの真剣な顔で。


とても優しく、とても丁寧に説明してくれた。