甘い体温②・前編・


「あと、半年だそうだ」


「…えっ?」


「果歩の母親、あと半年の命だそうだ」




時が。


時が止まるってこういうことなんだろうか。


まるで世界が壊れてしまったように、目の前の景色が崩れていくように見える。


目の前の陽生も。


キラキラ輝いてた景色も。


今まで見ていた全てがガタガタと、色あせていく感覚だった。




「あの人と…会ったの?」



そんな中、咄嗟にでてきた言葉はこれだった。


ほぼ、無意識だったと思う。



「ああ、実は今日昼過ぎに病院に来てな。ずっとそれを果歩に伝えようか迷ってたそうだ」


「……」


「本当は何も言わず、このまま静かに逝こうとも考えたそうだけど…でもな…」



陽生の声がだんだんと小さく遠のいていく。


その瞬間、何故かあの人の顔が思い浮かび、ただただ何も考えられなくなっていた。



だって、違ったから。


冷たい、怒ってる顔じゃない。


脳裏に浮かんだその顔は。



何故か、優しく穏やかに微笑む最高の笑顔だったから…