「違いますか?」
さりげなく核心をつくと、、岩瀬早苗がハッとしたように顔を上げた。
できるならこのままゆっくり話をしたいのはやまやまだ。
けど、時間がない。
もうすぐ午後の診療も始まるし、その前に俺も言うことを言わなければならない。
「すみません。この後あまり時間がないもので」
俺がそう言うと、岩瀬早苗は申し訳なさそうに「ごめんなさい」と言った。
そして意を決したように姿勢を正したと思ったら。
「実はそのことでぜひ先生にご相談したいことがありまして」
「え、相談…ですか?」
「はい。本当は今朝、あの子に会った時に話そうと思ったんです。
…けど、案の定聞きたくないって逃げられてしまいましたから…」
そう言って、目の前の瞳が切なそうに潤んでいく。
まるで、その時のことでも思いだしているかのように。



