「どうぞ」
俺はそう言うと、岩瀬早苗をカウンセリング室に招き入れた。
遠慮がちに頷き部屋の中へと進む岩瀬早苗。
ここなら、午後の診療まで誰にも邪魔されることなくゆっくり彼女と話せるだろう。
俺はそのまま真っ直ぐ進むと、棚からカップを取り出し、岩瀬早奈江の方に少し体を傾けた。
「何か飲みます?」
「あ、いえ…」
ドアの入り口にたったままの彼女がやっぱり遠慮がちに俺を見る。
手に持っているカバンを強く握りしめ、顔を緊張で強張らせてる様子。
「とりあえず座りません?あ、ちなみにコーヒーでいいですか?」
「えっ、はい…」
その、なんとも言えない緊張感に、俺まで少し顔を引きつりそうになってしまう。
俺は彼女が向いのソファーに座るのを見届けると、注いだばかりのコーヒーを目の前テーブルに置いた。
「突然こんな風に来てしまってすみません」
岩瀬早苗がコーヒーに手をつけることなく軽く頭を下げる。
「いえ。俺も近いうちにそちらに覗おうとは思ってましたから」



