甘い体温②・前編・


「あ、先生」


院長室を出るとすぐ、一人のナースに呼び止められた。


彼女はここに努めて3年ぐらいになる田中さん。


よっぽど急いでたのか、俺の姿を見るなり少し息を切らしながら近づいてきて。



「先生にお客さんが見えてます」


「ん、お客さん?患者さんじゃなくて?」


「はい。なんか大事な話があるみたいですよ」



……大事な話し?



「製薬関係の人?」


「いえ、違います。たぶん一般の方だと…」


「名前は?」


「あ、聞き忘れちゃいました。すみません」


「ふーん。そっ、分かったすぐ行くよ」



あと20分ぐらいで午後の診療が始まる。


患者じゃないとしたら、よく来るセールスとかそんな類いだろうか?


そう思いながら待合室に行くと一人、俯きながらソファーに座る女性が見えた。


俺は少し足を速めて近づき



「すみません。おまたせしま……」



思わず足を止めた。