「あ、先生」
院長室を出るとすぐ、一人のナースに呼び止められた。
彼女はここに努めて3年ぐらいになる田中さん。
よっぽど急いでたのか、俺の姿を見るなり少し息を切らしながら近づいてきて。
「先生にお客さんが見えてます」
「ん、お客さん?患者さんじゃなくて?」
「はい。なんか大事な話があるみたいですよ」
……大事な話し?
「製薬関係の人?」
「いえ、違います。たぶん一般の方だと…」
「名前は?」
「あ、聞き忘れちゃいました。すみません」
「ふーん。そっ、分かったすぐ行くよ」
あと20分ぐらいで午後の診療が始まる。
患者じゃないとしたら、よく来るセールスとかそんな類いだろうか?
そう思いながら待合室に行くと一人、俯きながらソファーに座る女性が見えた。
俺は少し足を速めて近づき
「すみません。おまたせしま……」
思わず足を止めた。



