「っ……いた……」
たまらず声を漏らすと、陽生が笑いながら私を見た。
手は止めることなく傷口に触れたまま…
「だからしみるって言っただろ?」
「……うん」
「これじゃあ、しばらくは果歩のスカート姿は見れそうにないな」
「あー…うん」
気まずく頷いた私にすかさず陽生は苦笑い。
そしてまたすぐに傷口の方へと視線を落とし、手際よくことを進めていく。
まだ半乾きに揺れる目の前の髪を見つめながら、私は少し声のトーンを落とし、
「……ごめんね」
目を伏せた。
ソファーの上でギュッと手を握りしめると、どうしようもなく申し訳なさが込み上げてくる。
それもそのはず。
ここは病院の中の院長室。
あの後、泣くだけ泣いて、喚くだけ喚いた私を陽生は何も言わずここに連れてきてくれた。
ほぼ放心状態だった私に着替えまでしてくれて、こうして手当てまでしてくれている。



