まだ、自分の中にこんな感情があったなんて思ってもいなかった。
あの人に対してこんな思いが残ってたことも。
もうとっくにふっきれたと思ってたのに、
私には過去のことだって、そう割り切ってたはずなのに。
それなのに私は……
「ほら、果歩ちょっと足かしてみ」
「えっ…」
頭上から声が聞こえて私はハッと視線だけをゆっくり上げた。
見ると、そこにはピンセット片手に私を見下ろす陽生がいて。
「ほら」
「あっ」
床に付いてた足がふわっと上がる。
陽生はそのまま私の隣に腰を下ろすなり、私の両足を持ち上げ、クルッとソファーに乗せた。
「あー…だいぶ派手に転んだな…。フッ、ちょっとしみるけど我慢しろよ」
「えっ………つっ!?」
傷口にガーゼが当てられて、ビクッと体が強張る。
ジワリジワリ浸透してくる消毒の痛さに私は思わず顔を歪めた。