その瞬間、今まで必死に我慢していたものが一気に崩壊していく音がした。
その時、私の中でもう何もかもが悲鳴を上げずにはいられなかったんだ。
「もう、我慢するな」
雨の中、そんな私の気持ちに拍車をかけるような陽生の声。
だめ、抑えられない。
もう大丈夫なんかじゃない。
悔しくて、悔しくて。
苦しくてどうにかなりそうなんだよ。
だって…
だって…
「何で…私はダメなの?」
私は陽生の背中に腕を回すと力いっぱい爪を立てた。
そこにすべての思いをぶつけるように。
「どうしてあの子はよくて私はダメなの?」
あの子に対する母親の態度。
今更こんなこと思うなんてどうかしてると思う。
でも、それでも…
初めてだったんだ。
あんな優しそうな顔を見たのは。
あの人の、あんな幸せそうな笑顔は初めてだったんだよ。



