見たくなかった。
あんな光景なんて見たくなかったよ…
「うっ……」
さっきのやり取りを思い出した私は耐えきれず、自分の顔を両手で覆った。
すごく、幸せそうだった。
どこから見ても、誰も入る隙もないぐらい幸せそうな家族だった。
もちろん、そこに私はいなくて。
入る隙なんてどこにもなくて。
そんなことは当たり前のことなのにすごく…
すごくショックだったんだ。
ショックで…
今にも心が張り裂けそうで……
「果歩!」
ハッとして顔を上げると、いつの間にか陽生がいた。
心が、全神経がそこに集中する。
陽生は私を見るなり真顔で私の両肩を掴み。
「果歩、お前…」
私を力強く抱きしめた。



