目の前の扉が開き、驚いた声が飛んできた。
そこにいたのは静香さんだった。
「ど、どうしたの!?こんなに濡れて…」
「っ…静香さ……」
ゆっくり顔を上げると、静香さんがさらに驚いた顔をした。
「ちょっ、果歩ちゃんあなた泣いて……」
私の顔を見るなり表情を歪めた静香さん。
ああ、そうかこれは涙なんだ。
頬に流れ落ちる雫。
てっきり雨だとばかり思ってたけど…そっか、私泣いて…
もう自分がどんな状態なのかも分からない。
言葉が続かず、ただ泣くしかできない私を何故か静香さんは優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫、大丈夫だからね。待ってて、すぐに陽生呼んできてあげるから」
まるですべて分かってるかのような口ぶり。
背中をポンポンと2回ほど叩いた後、静香さんは目を細めて私の頭を撫でた。
けど、最後に見せたその切なそうな顔が一瞬、さっきのあの母親の姿と重なって見えて、
また、胸が苦しくなった。



