――…もう、逃げられない。
そう思った私は覚悟を決め、必死に冷静を装いながらブラウンの元へと足を進めた。
大丈夫。
こんなのどうってことない。
私にはもう関係ない人達なんだから…
あえて私は優達から視線を逸らし、グッと歯を食いしばった。
「ブラウン帰ろう」
縛ってあったリードを外し、その茶色い体を抱き上げる。
斜め後ろから痛いほどの視線を感じたけれど、気付かないふりしてまた横を通り過ぎた。
「果歩……」
「あーあ。せっかく買ったお酒落としちゃった。大丈夫かな」
あえて話しかけられる隙を与えないようにブラウンに問いかける。
こんな人達なんか知らない。
私には母親なんていない。
「果……」
「あ、でも瓶がなかっただけギリギリセーフか。何とか飲めそうだよ。よかったね」
落ちた袋を拾い上げた瞬間、ガシっと後ろから腕を掴まれた。



