聞き覚えのある声が聞こえてハッと私は足を止めた。
………ママ?
一瞬、ほんの一瞬あの子の顔が浮かんだけれど、私は慌てて首を横に振った。
まさか…ね。
まさかこんな所で会うわけないよね。
うん。違うよ、人違いに決まってる。
子供の声って意外とみんな同じように聞こえたりするじゃない?
そうだよ。まさかそんな偶然…
第一こんな近所で会うはずなんてないんだから…
「うん。気のせい気のせい」
そう自分に言い聞かせて一歩、開いたドアから勢いよく出た私。
「あら、本当ね。可愛いじゃない」
「うん。めちゃめちゃ可愛い。ねえ、少し触ってもいい?」
「えっ、でもママちょっとこれから行きたいところが…」
「えーっ、やだやだ、触るぅ、ワンワン触るの!」
「あっ、ちょっと優っ!?」



