甘い体温②・前編・


聞き覚えのある声が聞こえてハッと私は足を止めた。


………ママ?



一瞬、ほんの一瞬あの子の顔が浮かんだけれど、私は慌てて首を横に振った。


まさか…ね。


まさかこんな所で会うわけないよね。


うん。違うよ、人違いに決まってる。


子供の声って意外とみんな同じように聞こえたりするじゃない?


そうだよ。まさかそんな偶然…


第一こんな近所で会うはずなんてないんだから…



「うん。気のせい気のせい」



そう自分に言い聞かせて一歩、開いたドアから勢いよく出た私。



「あら、本当ね。可愛いじゃない」


「うん。めちゃめちゃ可愛い。ねえ、少し触ってもいい?」


「えっ、でもママちょっとこれから行きたいところが…」


「えーっ、やだやだ、触るぅ、ワンワン触るの!」


「あっ、ちょっと優っ!?」