甘い体温②・前編・


「あんま我慢するなよ」


「え?」


「俺の前では無理しなくていい」


「はる…き?」


「何か困ったことがあったらいつでも俺に会いに病院に来い」



最後にそう言い残して玄関を出て行った陽生。


そんな後姿を見つめながら、溢れそうになった涙を私はグッと堪え…



「……っ…」



ああ、そうか。全部陽生は分かってるんだ。


この心の奥の突っかかりも、モヤモヤとのしかかる重い不安も何もかも全て……


だからこんな……


ポタリ、床に落ちてく水滴を見つめながら思わず両手で頬を叩いた。



ダメだダメ!


たかが母親と再会したぐらいで何こんなに動揺してるんだろう。


こんなナーバスになって、陽生に心配ばかりかけて。


情けない…


もっとしっかりしなきゃ。


もっとちゃんとしなきゃだめでしょ!