「果歩…」
俺はそっと果歩の涙を拭い、顔を近づける。
額に浮かんだ汗がどうにも辛そうで、眉をひそめずにはいられない。
目の前の潤んだ瞳を見つめながら、額にかかる髪を指ですくって…
「陽生……」
ハッと意識を取り戻した果歩が勢いよく俺に抱きついてくる。
何かに怯えるように俺の首に腕を回した果歩の体を、俺もまた強く抱きしめ返す。
「…大丈夫か?」
体が弱々しく震えている。
かろうじて小さく頷いてくれた果歩の背中をあやす様に何度も撫でると、耳元でか細い声が聞こえてきた。
「いつ……帰ってきたの?」
果歩がぎゅっとしがみ付きながら俺の肩に顔を埋める。
「ん、今さっき」
俺はそのまま果歩の体を横向きに抱き上げ、ゆっくりソファーに腰を下ろした。



