カウンセリング室を出て、そのまま次の患者の元へ向かう途中、廊下ですれ違いざま静香に声をかけられた。
「未来ちゃん帰ったの?」
「ああ、今さっき」
俺はゆっくりと足を止めると、顔だけ静香の方へ傾けた。
それに合わせて静香も俺の方へと視線が移る。
「果歩ちゃんまだ調子悪いの?」
「なんだ、聞いてたのか」
「いや、そうじゃないけど…なんとなくそんな類いの話しかと思って」
眉を下げた静香が少しだけ目を伏せる。
こいつも、静香も常に果歩を気にかけてくれてくれている心強い味方の一人だ。
あの日、果歩が倒れた時も本当は俺に負けないぐらい心配して必死になってくれていた。
いつも茶化すように俺に突っかかってくる奴だけど、
正直、実の妹のように果歩と接してくれてくれている静香の優しさに、なんだかんだ言いつつも俺も感謝しざるをおえないでいる。
こいつには昔から頭が上がらないのが本音だ。



