甘い体温②・前編・


「それで俺と喧嘩でもしたんじゃないかと思って来たわけだ」


「…はい、ごめんなさい。でも、それがすごく痛々しくて、あんな三月さん見るのは初めてで、見てるこっちが悲しくなってきちゃって…だから私……」



辛そうに俯むいた未来ちゃん。


その時の様子を思い出したのか、寂しそうに唇をかみしめる姿に俺もつられるように眉を下げた。



「そっか…」



そう呟き、俺は彼女から視線を外す。


目の前の冷めかけのコーヒーと共に、俺の気持ちもじわり、切なくなるのを感じて…



まさにそれは予想通りの言葉だった。



……果歩の様子がおかしい。



そのことはここ最近、俺自身もずっと身にしみて感じてたことだった。


普段俺と接してる時は常に明るく振舞ってる果歩。


けれどその半面、夜になると異様に一人になるのを怖がり、俺の傍から離れようとしない。


一人になるのを極端に避けているって感じで、


常に隣に誰かがいないと安心できないといった様子だった。