本当、世の中は広いようで狭い。
つくづくそう思えてしまう運命の巡り合わせ。
「う〜ん。それにしてもやっぱりここは落ち着くな〜。昔とあまり変わってないし」
両手でカップを持ちながら、彼女がキョロキョロとカウンセリング室の中を見回す。
嬉しそうに口を緩める姿を見ていると、昔の思い詰めた姿がまるで嘘のようだ。
「ん、そう?」
「はい、第二の我が家っていうか、私にとってはまさに癒しスポットですね」
「はは。癒しスポットか…それは面白い例えだな」
「でしょ?ここはある意味私の命の再生の場所ですから」
なるほど。再生の…場所か。
そう言ってもらえるのは光栄だな。
素直に嬉しい。
こうして一度でも関わった患者が立ち直り、元気に笑っている姿を見るのは何よりの俺の生きがいだから。
「その節はお世話になりました」
「いーえ。どーいたしまして」
「でも、これからもいろんな意味でお世話になると思うので、改めてよろしくお願いします」
茶目っ気に笑った彼女が何だかすごく成長したように思えた。



