だからこの話はもうお終い。
「ねぇ、家に帰ったら陽生の作ったお粥が食べたい。だめ?」
「えっ、ああ……」
戸惑いの表情を浮かべる陽生と静香さんを残して、私はベッドからゆっくり下りた。
気付けばもう夜の8時過ぎ。
ふと、見上げた窓の外にはまばらに星が光って見えた。
うん。大丈夫。
私には陽生がいるんだもん。
それに静香さんだって、
私は一人じゃない。
昔の私とは違うんだから……
「あ、静香さん、今度の休みに前言ってたパフェのお店連れてってくださいね」
「…果歩ちゃ……」
まだ何か言いたそうな静香さんにあえて気付かないふりして、私はかばんを手に取った。
もう忘れなきゃ…
忘れるんだ。
この胸の痛みはきっと風邪のせい。
そうに決まってるんだから――…



