「おい、果歩?」
そんな私に陽生の心配そうな声がとんでくる。
少し眉を寄せ、顔を覆っていた手首をはがされ、視線を重ねられたけれど、それでもあえて笑顔で答えた。
「本当に大丈夫だから、安心して」
「でも、お前……」
「それよりもお腹すいちゃった。ぐっすり寝たら元気回復したみたい」
あっ、そう言えば今何時だろう?
陽生からさりげなく視線を逸らし、時計に目を向ける。
もう、今は何も考えたくない。
っていうより、考えたって無駄無駄。
だって、今更考えたところで何になるの?
何も変わらないじゃない。
5年前私が捨てられたのは紛れもない事実で、
優はあの女の子供で、
これが真実なんだから…
腐ってもこれが現実だ。
向こうは向こうで楽しくやってるならそれでいいじゃない。
それまでの話だよ。



