近くで看護婦の慌てた声が聞こえてくる。
震えながら咳き込む私に、陽生の顔が険しくなって…
なに、これ。
意識が朦朧とする。
唇が、手が痺れて体の力が抜けていく。
……私、このまま死んじゃうの?
たまらず「やっ!」と泣き叫ぶと、陽生が私の上半身を持ち上げた。
「果歩、落ち着け、ゆっくり深呼吸しろ!」
必死な陽生の声も上手く反応できない。
泣きながら首を振る私を見て、陽生がチっと声を上げた。
「酒井さんペーパバッグだ。至急紙袋を持ってきてくれ!」
言いながら、陽生が私を抱きしめる。
安心できる腕なのに、今はそれさえ何も感じられない。
「果歩大丈夫、大丈夫だから」
グッタリする意識の中、陽生が何度も私を呼んだ。
「お姉…ちゃん?」
駆け寄って来る小さな足音。
今にも泣きそうな優の姿を見た瞬間――…
そこで意識が途絶えた。