そんな気まずさ満点の空気に、体のだるさもピーク寸前。
立ってるのも辛くなって表情を曇らせると、いち早くそれを察した陽生が気を取り直すようにメガネを上にずり上げた。
「ま、とりあえずこちらにどうぞ」
仕事モード全開の陽生がすぐに目の前の椅子に私を促す。
カルテに目を通しながらボールペンでサラサラと何かを書き始める。
それを見ながら何故か、優が突然陽生の白衣をちょんちょんと引っ張った。
「あのね、先生」
呼ばれて陽生が優の方に体を傾け直す。
内緒話するように陽生の耳元に顔を近づける優に、今度は私が首を傾けた。
「ん?」
「あのね。お姉ちゃん注射怖いんだって」
「…えっ」
「だからあんまり痛くしないであげてね」
「はっ?」
「ちょっ!?」



