甘い体温②・前編・


ビックリした私は目を見開く。


振り返ると、ニッコリ笑った看護婦が少し離れた所に立っていた。



こ、このタイミングで??


思わず体を強張せると、看護婦がもう一度私の名前を呼んだ。



「三月さん。三月果歩さん?」


「あ、はい…」


「中へどうぞ」



そう言って笑顔で誘導しようとする看護婦を見つめながら、あちゃ…と顔を手で覆った。


な、なんていうタイミングの悪さ。

嫌な汗が額から滲み出てくる。


けれど、そう思ってももう遅い。



「お姉ちゃん呼ばれたの?」



腕を引っ張られて、顔を引きつらせる。


…うん。と頷いた瞬間、さらにグイっと引っ張られてその場から立ち上がらされた。



「大丈夫。頑張ろうね」


「え、いや…」


「僕もついて行ってあげるから」


「へっ、あっ、ちょっと待っ……」



力が、入らない。


気合い満々の優に引きずられ、私は顔を引きつらせながら診察室の扉を開けた。