ビックリした私は目を見開く。
振り返ると、ニッコリ笑った看護婦が少し離れた所に立っていた。
こ、このタイミングで??
思わず体を強張せると、看護婦がもう一度私の名前を呼んだ。
「三月さん。三月果歩さん?」
「あ、はい…」
「中へどうぞ」
そう言って笑顔で誘導しようとする看護婦を見つめながら、あちゃ…と顔を手で覆った。
な、なんていうタイミングの悪さ。
嫌な汗が額から滲み出てくる。
けれど、そう思ってももう遅い。
「お姉ちゃん呼ばれたの?」
腕を引っ張られて、顔を引きつらせる。
…うん。と頷いた瞬間、さらにグイっと引っ張られてその場から立ち上がらされた。
「大丈夫。頑張ろうね」
「え、いや…」
「僕もついて行ってあげるから」
「へっ、あっ、ちょっと待っ……」
力が、入らない。
気合い満々の優に引きずられ、私は顔を引きつらせながら診察室の扉を開けた。



