甘い体温②・前編・


「あ、僕の名前は優だよ。お姉ちゃんは?」



ちゃっかり私の隣に座った優が満面の笑みを向ける。


足をぷらぷらさせながら、それはもう嬉しそうに。



「あー…うん。果歩だよ」



その場しのぎの笑顔を向ける。


さっきからどれぐらい経ったんだろう。


一向に母親が戻って来る気配はないし。


体はだるくなる一方だし。


隣からの無邪気な質問攻めの嵐にほとほと疲れ果てていた。


ていうか、私病人なんですけど……



うな垂れるように俯くと、優が慌てて顔を覗きこんできた。



「お姉ちゃん大丈夫?」



くりっとした大きな瞳が心配そうに揺れている。



「あー…うん」



できることならそっとしておいてほしいんだけどね。


もう作り笑いをするのもしんどくなっていた。