甘い体温②・前編・


それから、保険証を無事に手にした私は何とか病院までたどり着くことができた。


タクシーを降り、受付を済ませて、重い足取りで待合のソファーに体を沈めた瞬間、どっと疲れが押し寄せた。



「はぁ…なんかけっこう混んでるんですけど」



見渡せば、座る所がほとんどないぐらい患者さんで溢れかえっている。


子供からお年寄り、それは幅広い顔ぶれだ。


なぜか、異様に女の人の割合が多い気がしないでもないけれど、


そこはあえて突っ込まないでいておこう。






……それにしても。



「後どれぐらいかかるんだろう」



慌ただしく行き来する看護婦の姿を眺めながらふと、ため息がこぼれ落ちる。


こんなことならやっぱり陽生に連絡しとけばよかったのかもしれない。


てか、これだから病院って苦手なんだよね。


ただでさえ元々病院全般あんまり好きじゃないし。


せめてこの待ち時間さえなければ言うことないんだけど…