甘い体温②・前編・


「んじゃね、ちゃんと椎名先生に診てみもらうんだよ」


「あ、うん」


「また連絡するから」



手を振る後藤に見送られながら私は学校を後にした。



ここから陽生の病院まで20分ぐらいだよね?


タクシーの後部座席にもたれながらふと思う。


あ、でもその前に…



「すみません。先にマンションに寄ってもらってもいいですか?」



そう告げた。


保険証とか一応持って行ったほうがいいよね?


まさかこんなことになるなんて思ってなかったから、財布にお金とかも全然入ってないし…


いくら恋人が経営してる所とはいえ、何も持っていかないのも……あれだよね?


図々しいっていうか、さすがになんか気が引ける。


まぁ、きっと陽生はそんなこと気にしないのかもしれないけれど…



一応、念のため…。