優しく目を細めた陽生に鼓動が弾む。
この真っ直ぐな隙のない瞳にいつも私の心は平常心を奪われるんだ。
「それに、過去があるから今のお前がいるんだろ?」
「え?」
「たとえそれがどんな人生だろうと関係ない。果歩は果歩だ。
俺はそんな過去も全部ひっくるめて、今ここにいる三月果歩が好きなんだから」
「はる…」
「たまらなく愛おしいと思う」
優しい声と一緒に胸元にチクッと痛みがはしる。
その感触にまた涙腺が弱まる感じがしたけれど。
それをグッとこらえ、少し震える声で陽生の髪の毛に指を絡めた。
「さっきはあんなに耐えられないとか言ってたくせに?」
「え?」
「できるなら、過去の男を消してやりたいって…」
そう言ってなかったっけ?
「あー…はは、だな」
少し苦笑いを浮かべた陽生が私を見る。
それでも私の頬を撫でた後、またすぐに笑って耳元に甘い言葉をくれた。



