「俺もそろそろ新しいスーツの代えが欲しいと思ってたし、久々にショッピングでもしようか?」
「…ショッピング?」
「ああ、せっかくだし1着と言わず、2着でも3着でも果歩の好きなだけ、欲しい分だけ買えばいいよ」
フッと楽しそうに私の顔を覗きこんだ陽生。
私は思わず絶句する。
好きなだけって…
どんだけよ…
と、思わず突っ込みを入れそうになったけれど、きっととんでもない答えが返ってきそうな気がして、あえて口をつぐんだ。
いつもそうだ。
相変わらず陽生の金銭感覚ってついていけない。
て言うか、はっきり言って謎だ。
元々物欲があまりない私には驚くことばっかりで…
「いや…別に私はそこまで欲しいわけじゃ…」
そう一言告げようものならば。
「は?何だよ、今更遠慮することないだろ?お前の我がまま聞くのが俺の楽しみなのに…」
とかなんとか訳のわからないことを言われ。
心底つまらなそうな表情を向けられるのは当たり前の光景になっていた。
正直、もう一緒に暮らし始めて2年になるけれど、どうしてもここだけは未だになれない未知の世界だったりするんだよね。



