両親に「愛してるよ☆」と伝えられる様になった愛果は,何時の間にか祐里と一緒にクラスメートに対して“愛されている事”を伝えたい様になっていた。
クラスメートの中には,最初の私と同様,両親の事が大嫌いだけれど,其の事を如何しても上手く伝えられない人が意外にも多かったの。その中の一人,岡本秀樹は,両親から酷い暴力を振われた事が切っ掛けで,両親の事が大嫌いになったって言うの。

秀樹には10歳も離れた妹が居て,妹の碧が生まれてから両親は妹ばかりに目が行き,秀樹が「遊びに行こうよ♪」と話し掛けても,両親からは無視される一方なんだって。それどころか,妹が食事中に食べ物を溢すと,「秀樹,あんたが注意しないから碧が食べ物溢すんでしょ!!!!」と母親に怒鳴られ,父親からはお酒の瓶を投げ付けられる程だったと聞いて,愛果は黙って居られなくなっちゃったんだ。

「僕はもう,家出する積りだから!!!!!!」

秀樹は帰宅して両親に会うのが嫌で嫌でならないんだって。家出して学校で暮らして,クラスメートと話す毎日にしたいって話も有った。自殺を捗ろうとした事も有った程だから,秀樹の家庭は本当に悲惨な状態なんだね。

でも,祐里は秀樹に「自殺したら,秀樹君の両親も悲しむと思うでぇ。」と一言―――。「そんな筈無いだろぅ!!!!親は僕の事なんて最早相手にもしないんだから!!!!」と秀樹。愛果は,両親に虐待を受けている秀樹の話を聞いて,涙が止まらなくなっちゃったんだ。そして,秀樹は途中で黙って何処かに行っちゃったの。
あれだけお家に帰りたくないと言っていただけに,秀樹が何処に行ったのか,私と祐里は気になって仕方なかった。

「秀樹君,何処行ったやろぅ?」
心配してならない祐里―――。「お家にでも帰ったのかなぁ?」と愛果は思ったけど,クラスメートに秀樹の行方を聞いても「全然解らないんだ。」との返事ばかり。
「どうせやったら,秀樹君のお家直接行った方がええんちゃうん?」と祐里が答えたんだけど,私は其の事に対して何にも返事が出来なかった。